すわほうじん147号
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煮上がった新豆。この時の色などで、豆の良し悪しのある程度の察しがつく〈菓子歳時記〉その12しとフワの   らくがん法人会会員「岡谷 精良軒」 原 昭徳スィーツオアシスにようこそ この年末年始は、本当に人の集まりがなかった。忘新年会をはじめとして。まだまだ先は見えないが、来年の今頃は色々が好転し、日常が戻ったねといっていたいです。 毎年決まった時期に作るお菓子がある。今ならさくら餅、うぐいす餅といった季節とリンクしたものもあれば、年中行事と結びついているものも。例えばお彼岸におはぎ、お月見には月見団子で、さくら餅は、桃の節句の行事菓子という側面もある。その他その地域だけ、そのお祭りだけのお菓子もある。 この時期弊店の場合、節分祭などのお供え物として、らくがんを作る。ほとんどが、いつから受注しているか分からないと思われるほど毎年のことで、うちにとってはそれ自体が季節感になっていたりする。 ちょうど空気が乾燥する冬、湿度が大事になってくる。らくがんのことを、打ち物といったりするが、それは型に入れた材料を、ゲンベラという木の棒で打ち出すから。その材料の程よい湿り気が、ポイントになる。砂糖、みじん粉(餅を粉末状にしたもの)や水飴を、充分に混ぜてらくがんの生地を作る。ここで色をつけたりもする。 そこでいつも思うのだ。らくがんらしくない前らくがんが、なんとも美味しそうだと。それが表題のしとフワのらくがん、しっとりフワフワのらくがんの元だ。形にするにはある程度の水分が必要で、異物を取り除き、均一な生地にするためにふるいにも通すことによる。ほのかな温かさもある。乾いてしまえばさらさらとした粉になってしまう。工程上の限られた時間しか存在しないから、店に並ぶことはないのだ。 そんな時間限定の販売未満のお菓子は他にもあって、製品化する良い方法はないものかと、思ったりする。

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