すわほうじん146号
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税理士会コーナー知って納得!教えて税理士さん!関東信越税理士会諏訪支部税理士 篠原 仁志どうして記帳(決算書)するのでしょうか?1.それではいきなり「三択」です。  記帳(決算書作成)する本当の目的は何でしょうか?(1)税務署のため(2)銀行のため(3)会社のため2.複式簿記の成り立ち【参考文献:坂本孝司著 会計で会社を強くする 2008年8月5日第1版 (株)TKC出版】 決算書は、複式簿記により、商取引の一つ一つを仕訳に起こして集計されたものです。歴史的にはルカ・パチョーリ(1445年頃、イタリア中部生まれ)により、集大成された複式簿記が、現在世界各国で使用されています。500年以上その原理は変わっていません。 日本においては江戸時代には大福帳による算盤使用に適した独自の帳簿システムが確立していましたが、本格的な複式簿記の導入は欧米からの導入によるものであり、明治6年(1873年)に福澤諭吉により『帳合之法』が最初です。4.記帳(決算書)現代的意義 「農夫とその子どもたち」のイソップ物語は皆さんもご存知の方が多いかと思います。その内容は、宝物を探すため、ブドウ畑を全て掘り返した。けれど宝物は見つからなかったが、翌年ブドウが大豊作となったというお話です。記帳(決算書)をすることは、直接、製品を作ったり、商品を販売したりすることではありませんが、会社の利益・発展に繋がるということです。このことを「会計で会社を強くする」と言います。皆さんの答え如何に?3.決算書作成の成り立ち(1)決算書作成の目的の現状   我が国の企業の99.7%(2019年度版中小企業白書より)は中小企業であり、そのほとんどが、株式未公開の同族会社です。従って利害関係者に決算書の報告は機能していません。税務申告のために作成していると答える社長さんがほとんどでしょう。(3)日本の商法の生い立ち   我が国の商法も個人事業者を含むすべての商人に「記帳と決算書作成」を義務付けています。その生い立ちは、1673年商事王令→1807年ナポレオン商法→1861年一般ドイツ商法典→明治23年(1890年)日本商法がドイツ人ヘルマン・ロエスエルによって草案される。→明治32年(1899年)商法→その後幾多の改正→現在の商法・会社法となっています。日本の商法・会社法もこのような歴史的経過をたどり制定・改正され、その精神は、会社を存続発展させるところにその本質を置いています。①フランスの事例:フランスでは、ルイ14世の時代に「フランス商事王令」(1673年)を制定して、商人に記帳や決算書の作成を義務づけました。当時、倒産が多く、「破産時に帳簿を裁判所に提示できなかった者は死刑に処す」規定が盛り込まれ、実際に違反者に死刑が執行されました。つまり、正し記帳と決算書の作成(死刑にされないための証拠となる)が倒産を防止し、成長する経営には不可欠であることを今から300年以上前から理解していたのです。驚きですね。②ドイツの事例:ドイツの会計学者レフソンは、「なぜ、外部報告する義務がない個人事業者にまでも年一回の決算を義務づけているのか?それは自己報告のためである。」と。さらに「企業倒産を防止する意図がある。」と。また、ドイツ税法の権威者クレソーは「だらしない記帳は破産者の特徴である。」と。以上をまとめると「決算書は誰に報告するものでもない、倒産を防止するために経営者が自らに報告するために作成するものである。」別言すれば、健全な経営者にはタイムリーな決算(月次決算を含む)が不可欠であると言うことです。(2)海外の事例回答はこの文章を読み進めていただき、ご判断ください。5すわほうじん 第146号 (第三種郵便物認可) 令和2年11月1日発行

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