すわほうじん 139号
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〈菓子歳時記〉その4さくらもち 〜私的考察〜法人会会員「岡谷 精良軒」 原 昭徳スィーツオアシスにようこそ さくらもちにたいするロジックを提出するまえに、和菓子を構成する文化的要素について、先ずのべたい。それは以下の三点が、階層的にあると理解している。このことはわたしが、お菓子の歴史的背景、製法、包装形態、販売手法などを、高等教育、専門的機関において理論的学習、ときに短時間労働による経験的学習によって培われたものである。  その一、地域性。これが土台にある。和菓子つまり日本菓子と呼称することが可能である。それにたいし洋菓子という分類は、広義である。正確にはフランス菓子、イタリア菓子、アメリカ菓子などの定義が妥当だ。でないばあい中華菓子、インド菓子は、どうカテゴライズすればいいのかという問題に直面する。厳密に表記することによりそのお菓子が、その地域の気象、自然環境、慣習にうらうちされた存在、ということが浮かびあがってくる。 その二、年中行事。地域性によって形成、成熟された風習により、お菓子が製造される。和菓子製造販売業者は、地域住人になりかわり専門性をよりどころに、代行しているにすぎないのではないだろうか。 その三、季節感。年中行事が必須条件とはかぎらないが、最上階層がこれにあたる。生菓子など一部製品は、イコール季節感ともいえる。四季折々の風情がお菓子に反映され、いくつかの和菓子そのものが、季語になっている。 さくらもちを、このフォーマットに落とし込むとしよう。その一、全国にはさまざまなさくらもちが存在する。その二、現在ひな祭りが需要のピークだ。その三、さくらもちは春の季語である。以上をもってさくらもちは、もっとも日本的な和菓子とおもうのである。さくらもち製造工程。今回は学術タッチでかいてみました

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