すわほうじん 138号
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〈菓子歳時記〉その3蒸し羊羹って普通の羊羹とちがうの?法人会会員「岡谷 精良軒」 原 昭徳スィーツオアシスにようこそ 昨年の愛犬名前ランキングで、どうどうの第一位は「マロンちゃん」だったとか。例年人気の「チョコちゃん」をも抑えて。ことばの響きはまるいし、栗はだれからも好かれる味ということもあるだろう。そういえば、春先に出会った元Jリーガーの方も、栗が好きとおっしゃっていたっけ。収穫の季節、菓子店の軒先にも、果実などを用いた秋限定商品が顔をだすが、その中でも栗は王さまか。栗蒸しようかんは、和菓子店の代表的な季節菓子の一つだ。 「蒸しようかんって、普通のようかんとちがうの?」 先日弊店を訪れた友人が、ガラスケースの中黒塗りの漆器に収まった、栗蒸しようかんを指さしての一言だった。 そうちがうのだ。諏訪界隈でようかんといえば、練りようかんになるだろう。友人が普通といったのも、たぶんこのこと。どちらのようかんも小豆を使うからぱっと見は茶色で大差はないが、作り方にしても又材料にしても別ものと言えてしまう。まずは名前にもある製法の違いで、あんを蒸してふんわりか、練ってなめらかか。配合でいうとツナギという脇役が総入れ替えに。蒸しは小麦粉や片栗粉で、練りは寒天になる。 結果、舌ざわりが変わってくる。蒸しの方があっさりしていて弾力があり、練りの方がきめ細かく蒸しようかんよりは歯ごたえがある。全国的にも、練りようかんの方が一般的なので、秋だけの特別感と、栗王の玉座!?という食感の組み合わせで、やわらかい蒸しようかんが選ばれたのかもしれない。今年の栗蒸しようかん。これを専用の“ようかん包丁”で切り分ける

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