すわほうじん第136号
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税理士会コーナー知って納得!教えて税理士さん!関東信越税理士会諏訪支部税理士 飯田 昭雄 現行の事業承継税制は、平成21年度税制改正で創設された後、平成25年度税制改正、平成27年度改正及び平成29年度改正において、適用要件が緩和されてきました。しかしながら制度の認定件数及び適用件数は低調であり、制度適用の前提となる経済産業大臣の認定件数は、平成27年は相続税が243件・贈与税が274件で、平成28年は相続税が198件・贈与税が237件に留まっています。そこで、平成30年税制改正により「非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度」が創設されることになりました。現行の事業承継税制については、原則的な制度として存置した上で、「事業承継税制の特例」により、10年間に限定して事業承継税制の要件が抜本的に緩和されることになりました。 本コーナーでは、数回にわたり、「事業承継税制の特例」の概要について、原則的な事業承継税制との相違点を中心に解説していきたいと思います。《事業承継税制拡充の全体像》 今後5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象① 対象株式数の上限を撤廃(2/3➡3/3)、納税猶予割合を80%➡100%に拡大② 複数の株主から複数の後継者への事業承継についても対象者を拡大③ 後継者が売却・廃業を行った際、その時点での株価を基に納税額を計算し、減免可能④ 近年の人手不足の状況に鑑み、雇用平均8割を満たさなかった場合でも猶予継続が可能に「事業承継税制の特例」の概要 その①30年1月から10年間限定で事業承継税制を拡充※以上のほか、相続時精算課税制度の適用範囲の拡大及び所要の措置を講じる。(相続税・贈与税)中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充(事業承継税制)◆税制適用の入り口要件を緩和 ~事業承継に係る負担を最小化~◆税制適用後のリスクを軽減 ~将来不安を軽減し税制を利用しやすく~◆税制適用後のリスクを軽減 ~将来不安を軽減し税制を利用しやすく~○納税猶予の対象になる株式数には2/3の上限があり、相続税の猶予割合は80%。後継者は事業承継時に多額の贈与税・相続税を納税することがある。○税制の対象となるのは、一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続される場合のみ。現行制度○後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税が課税されるため、過大な税負担が生じうる。○税制の適用後、5年間で平均8割以上の雇用を維持できなければ猶予打切り。人手不足の中、雇用要件は中小企業にとって大きな負担。現行制度○売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免。経営環境の変化による将来の不安を軽減。○5年間で平均8割以上の雇用要件を未達成の場合でも、猶予を継続可能に(経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要)。改正後● 事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する「事業承継税制」を、今後5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象とし、抜本的に拡充。● ①対象株式数・猶予割合の拡大 ②対象者の拡大 ③雇用要件の弾力化 ④新たな減免制度の創設等を行う。改正後○対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能に。また、納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担ゼロに。○親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継を支援。すわほうじん 第136号 (第三種郵便物認可) 平成30年5月1日発行5

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